昨年度の香川県文化芸術新人賞受賞作家の作品展が18日、香川県高松市玉藻町の香川県立ミュージアムで始まった。出品者は陶芸家の亀井洋一郎さん(36)と漆芸家の辻孝史さん(37)。二人は同じ工芸作家ながらも表現志向が全く異なり、壁面で仕切った会場ではそれぞれの創造性と思想の対比を味わうことができる。2011年3月6日まで。
亀井さんは前衛陶芸の世界で活躍し、量産した一辺5センチの白い立方体を重ね合わせて造形するスタイルを一貫。会場には2001年の朝日陶芸展のグランプリ受賞作をはじめとする代表作8点を並べ、幾何学的な直線美が際立つシャープな空間をつくり出している。
辻さんは日本伝統工芸展などでおなじみの顔で、讃岐漆芸の籃胎(らんたい)の素地と、器物の内側に精緻(せいち)な蒔絵(まきえ)を施す「逆さ蒔絵」の融合を追究する。今回は過去15年間に制作した箱や盛器など17点を出品。オリーブや紅葉を表した意匠が深い詩情と精神性をにじませている。
亀井さんは東かがわ市出身で、大学で陶芸を学んだ後、同市と大阪を拠点に国際公募展への出品や個展を続ける。辻さんは高松市在住。人間国宝の太田儔さんに師事し、日本伝統工芸展で入選を重ねるとともに、県展などで入賞している。
この日は午前中から二人が会場を訪れ、来場者に出品した作品の制作背景や技法などを丁寧に説明した。